「オフショア投資」という言葉はこの10年の間に随分と濫用され、今やあまりよいイメージが無いばかりか、いかがわしいイメージばかりが先行してしまって残念な限りです。
「オフショア投資」というキーワードで誘われる案件の中には、実際にはオフショアでも何でもない訳の分からないものや詐欺的なものがわんさかあるのが現実です。
本来「オフショア投資」というのは、オフショア(タックスヘイブン)の金融機関が組成し、提供する投資商品に投資をするということを意味しますが、元々は、オフショアの銀行に口座を開設するということと、オフショアファンドを購入するということが中心であったように思います。
特に2000年初頭には、マンインベストメントやクアドリガ(現Superfund)などに代表される空前のヘッジファンドブームがあったので、そういったオフショアのヘッジファンドを買いたいという投資家が大半でした。
2005年頃から、フレンズプロビデントに代表されるオフショアの生命保険会社が提供するセービングプランと呼ばれる積立型年金プランのプラットフォームを利用して、少額からオフショアファンドを積み立てで買うことが可能な商品が普及し始め、ネットワークビジネス式に日本で広められました。
しかし、2008年の「サブプライムショック」までは、一括の資金をオフショアで運用したいと考える投資家が多く、積立よりは一括の商品を購入するひとが主流であったように思われます。
一般的に、積立型の商品と同様なファンドの選択肢を持った一括型の商品というのは存在し、フレンズプロビデントではゼニス、サミット、リザーブといった商品の人気が高かったように思います。
RL360°(ロイヤルロンドン)であれば、積立のクアンタムに対して、一括であればORACLE(オラクル)や、フレンズのリザーブに相当するPIMSという商品があります。
インベスターズトラストでも同様に、積立と一括の商品が存在し、RL360°やインベスターズトラストの提供する商品であれば、現在でも日本居住者が購入することが可能ですが、そのような一括投資商品は最近では見向きもされない傾向です。
このような“ラップ口座型一括投資商品離れ”の傾向には、サブプライムショックの時に損失を被った投資家が多かったことと、その後ヘッジファンドもBRICSやNEXT11と呼ばれた新興国に投資するオフショアファンドも成績が大して振るわなくなってしまったことから、オフショアファンドそのものに対する興味が薄れてしまったという背景もあるとは思います。
「オフショア投資」と呼ばれるカテゴリーの中で、実は金額的には大きなシェアをかつては占めていたものは、プライベートバンキングと巨額な死亡保障の付いた相続対策向け生命保険だっと思われますが、これも最近ではすっかりなりを潜めてしまいました。
おそらく、保有資産が数十億以上の富裕層は、10年以上前に既にプライベートバンクにも口座を持ち、海外の生命保険もセットアップされているのだと考えられます。
海外の不動産投資というのも流行ですが、これは「オフショア投資」というカテゴリーのものではありません。
このように考えると、ミステリアスで奥深く思える「オフショア投資」なるものの実態は、開けてみれば大半が「少額の積立投資」であると言えます。
そして、最終的な投資先は、部品として存在する「オフショアファンド」です。
「オフショア投資」というものをこれから考える人は、「オフショアファンド」というものを購入するのだということをもう一度考えた方が良いでしょう。
それが、一括投資であれ、積立投資であれ、日本居住者でありながらオフショアファンドに投資することは何の違法性もありません。
もちろん、オフショアファンドに投資をしたいと思う多くの方々は、本来なら日本居住者である限り日本で申告義務のある利益が確定したときの税金をできれば払いたくないと考えているに違いありませんが、税金については世界中どこでどのような投資をしていようが、日本居住者である限りは、利益が確定したときには申告を行う義務があるとしか申し上げることはできません。
「オフショア投資」というものが廃れてきた原因のひとつとして、「オフショアに投資をしたところで、節税性はない」ということが分かってきたということもあるのでしょう。
それでは、このようにそれほど凄いインパクトもメリットもない「オフショア投資」なるものを、わざわざやるべき理由というのは、いったいどこにあるのでしょう?
おそらく殆どの「普通に生きている人たち」にとって、その理由を見つけることは困難でしょう。
私自身は、10年以上前からオフショア投資しかしておりません。
(例外的に、ランドバンキング、プロパティーバンキングといった米国の不動産投資はあります。)
そもそも、私の場合は日本国内で円建ての収入が殆ど無いので、日本で投資をする意味がありません。
13年前に、初めて「オフショア投資」のことを知ったときには、「ああ、もし10年前から知っていたらなあ」と心から思いました。
今現在、やっていてどうだったかと言えば、「運用でそれほど儲かっているとは言い難いが、自分の方針は間違ってはいなかった」という確信はあります。
結果から言うと、「やっていてよかった」と思います。
なぜ、そう思えるのか?
答えは簡単です。
それは、「多くの人がやっていなかったことを、自分がやってきた」という部分が大きいと思います。
具体的には、円高の続いた過去10年間に、円建ての資産を全く構築しなかったということ。
ユーロを最初から信用しなかったので、ユーロ建て資産もない。
オフショアファンドをオフショアでドル建てで買ってきただけの10年です。
これから先の10年も、おそらく淡々と同じ事を続けると思います。
知ってしまえばシンプルで分かりやすいオフショア投資のプラットフォームは、限りなく完成されたものであり、それを超えるものが無いと言っても良いレベルです。
HSBC香港の銀行口座などもそうですが、完成された使いやすいプラットフォームには魅力があります。
気に入ったプラットフォームは、とことん使い倒す。
そして、使い倒すことで、自分のレベルが上がり、そのスタンダードで他のものも評価が可能になる。
自分ではののように考えています。
投資好きな方々の中には、往々にして、複雑で分かりにくいシステムや、ハイリスクだが短期的には期待値の高い投資を好む傾向もあり、議論のあるところですが、自分にはその議論そのものにあまり興味がありません。
今お金のないひとは、毎日毎月稼いで積立をするしかありません。
オフショアの積立商品を利用して、外貨建てで時間をかけて運用するしか方法は無いと思います。
貯金するお金の余力がある人は、オフショアの銀行口座(香港HSBCでよい)の口座を開設した方がよいでしょう。
生命保険が必要な人は、もし買えるならばオフショアの生命保険を買った方がよいでしょう。
腐るほどお金がある人は、プライベートバンクに口座を開設するのがよいでしょう。
オフショアでできることは、たったそれくらいのものです。